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松田 健次
九州工業大学大学院工学研究院
ハンマ反発挙動とシャルピー衝撃値の関係の解明
対面角が異なるダイヤモンド四角錐圧子を有する2種類のハンマを試験片表面に衝突させ,ハンマ反発挙動とシャルピー衝撃値の結果を比較することにより,低温脆化がハンマ反発挙動に及ぼす影響を調査した.
ハンマ
超硬合金製の軸の先端に,対面角α=136°と172°の2種のダイヤモンド四角錐圧子を付与した2つのハンマを用いた.各ハンマの質量は,
P136 (α=136°) :39.2g,
P172 (α=172°) :39.1g,
である.
試験片
シャルピー衝撃試験片(未使用)の側面に上記ハンマを
衝突させた.材質は,
SS400D
快削黄銅
の2種である.
温度条件
室温:19℃~22℃
低温:-79℃~-84℃
落下高さ(衝突速度)の目標値
5 mm(313mm/s)


反発係数と温度の関係
全体的に対面角172°の圧子の方が対面角136°よりも反発係数が大きくばらつきも大きい.温度の影響に注目すると,対面角136°の場合,快削黄銅では低温の方が若干小さく,SS400では低温の方が若干大きい.対面角172°においてはばらつきが大きく正確な比較は困難であるが,平均的な値で比較するとSS400では低温の方が10%程度小さく,快削黄銅では両温度で同程度であった.

快削黄銅

SS400D
加速度波形と温度の関係
対面角172°の圧子の方が加速度の最大値は136°の場合よりもかなり大きく,一方衝突時間は136°の場合よりも小さくなっていることが分かる.快削黄銅の場合,対面角136°では温度による相違はわずかであり,対面角172°においては低温の方が最大値が若干大きくなっているものの室温との相違は小さい.一方,SS400Dの場合,対面角136°の場合は温度の影響は小さいが,対面角172°の場合には急峻な山の形態を呈し,最大値は室温の場合よりも40%程度増加している.
反発係数のばらつきが大きいため,現段階では反発係数の変化と低温脆化との関連について議論するのは困難である.しかしながら,速度波形,加速度波形に注目すると,低温脆化が生じない快削黄銅では温度の影響が小さいのに対し,低温脆化が生じるSS400Dでは顕著な影響が生じることが明らかとなった.このことは,本研究で開発した低温環境反発試験機によって,-80℃の低温下においてもハンマ反発挙動を精確に捉えられることを示すとともに,反発挙動を精確に捉えることにより材料劣化の程度を把握することが可能になることを示唆していると言える.
本研究の一部は,競輪の補助を受けて実施しました.
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